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2011年9月25日 (日)

山歩き:乗鞍岳、阿多野郷より

山歩き:乗鞍岳、阿多野郷より

乗鞍岳というのはなんとも不思議な山である。
立山、白山、御嶽と同様、大きな山域で独立峰の風格を持つ火山である。
22ピークを持ち、蒼い宝石のような火山湖が点在し、高山の魅力は豊富。
しかし、いざ登山コースを調べようにもガイドブックがない。

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【山行日】2011年9月23日(金)
【山 域】乗鞍岳:南乗鞍
【天 候】曇り一時晴れ、冷たい風とガス
【形 態】往復 単族 軽装鈍足
【コース】阿多野郷より中洞権現ノ尾根
【駐車地】阿多野郷神立原林道ゲート前に駐車
ゲート7:41--8:30登山口--11:00中洞権現--12:15剣が峰12:25--
--12:48昼食休憩13:12--13:40中洞権現--15:33登山口--16:06ゲート

乗鞍岳は名峰火山としてずっと登りたい山のひとつだった。
家からの距離が御嶽や木曽山脈よりも北にある分、中途半端に遠い。
登山コースは多いが、容易なものがまるでなく日帰りは難易。
そんなこんなで今まで近づけなかった。
昨年、意を決して前夜泊で、丸黒・千町尾根から挑んだ。
翌朝起きると無情の雨、傘をさしての遅出ではコース半分がやっと。
そして、歩いてみて分かった。
たとえ絶好調だとしてもこのコースの日帰りは自分には不可能だと。
でも火山が好きなので、あきらめきれない。
ということで、山頂へは最短というこのコースを選んだ。

乗鞍岳というのはなんとも不思議な山である。
立山、白山、御嶽と同様、大きな山域を持つ独立峰の風格を持つ火山である。
22ピークを持ち、蒼い宝石のような火山湖が点在し、高山の魅力は豊富。
しかし、いざ登山コースを調べようにもガイドブックがない。
往年の切り札「山渓アルペンガイド」も、「乗鞍」だけ図書館にはない。
結局、現在だからネット他で調べる。
すると、当然いくつかのコースがあることはある。あった。
一番整備されているのは、前述の丸黒・千町尾根コース。
そしてこの、中洞権現ノ尾根(阿多野)コースである。
高天ケ原を通る戸蔵や野麦峠からのコースは環境保護のため廃道。
子ノ原尾根・千町尾根コースは無印良品の私有地で有料、制限されている。
他には、位ヶ原からとか、ガイド付き人数制限コースなどがあるにはある。

登山口の高根村阿多野郷へは木曽福島から入った。
アイミックス自然村南乗鞍オートキャンプ場を目指せば分かりやすい。
静かなキャンプ場に入り、通り過ぎるように抜けて未舗装の林道を上がる。
こういう林道は苦手である。
軽自動車で車高が低いこともあるが、いらんトラブルは避けたい。
あまりにがたがた道なら早めに駐車し、歩いた方が楽である。
でも、道幅は狭く転回もできないままゲート前に至る。

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ゲートは勿論しっかりと施錠されている。
どうも工事中のようで、「関係者以外立入禁止」の表示。
すぐに工事関係者の車が来て、開けて入り、きちんと施錠していく。
こんな時、登山者の立場はどうなるのか、いつも不安になる。
当然、関係者ではないから入ってはいけない、のか、
工事には関係ない者だから、工事に関わらない所だけは通れる、とか。

ゲートの脇を通りぬけて、急に広くなった林道を上がっていく。
登山口までは4㌔、標高差は300㍍で先を考えると急ぐ必要がある。
今日の天気は、急に秋の気配で肌寒く、身体を温めるのに都合がいい。

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歩いている間に工事関係者の車が5台以上は追い抜いていった。

工事現場に入り、ブルが造った急坂を必死に登っていると声をかけられた。

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「どこへ行くの」
「乗鞍岳ですが」
「登山口はずっと下で、左側に表示があったはずだけど」

林道の終点が乗鞍岳への登山口だと思いこんでいた。
だが、終点から延長して造られた工事道も林道と勘違いしていた。

戻ってみると、なるほど確かにあるにはあった。

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こんなことでは、先がおもいやられる。

登山口からはいきなりの急登である。

あまり使われていないと聞いていたが、道型ははっきりしている。

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ジグザグに高度を上げ、尾根芯を目指していく。

調子よく上がっていて楽だと思ったら、トラバース道は水平になっていた。

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目の前にトドマツの実がわんさか、痛々しい倒木だった。

そんな倒木を数本もぐり、またぎ、迂回して越えていく。

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刈られた笹の枯葉が堆積しているからコース道にはきちんと手が入っている。

赤テープや赤ペンキが樹肌にしっかり付けられていてコースも分かりやすい。

ただ、笹の枯れ葉はすべりやすく、足を乗せると下は水たまりだったりする。
広い尾根の尾根芯に入り、道は順調に行くのかと楽観するとすぐにがっくり。
笹刈り部分は終わり、コース道は小さな沢をたどっていくことになる。

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これが厄介だった。

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ネットで見た最新のレポ、8月に入山した人がここで引き返した気持ちがよく分かる。

小さな沢とはいえ、ずっと流れがあり、水がしっかりとたまっている。
その上に笹が覆い被さっているので、避けながら歩くのが大変だ。
ズボンは笹についた水滴ほかでとっくにぐっしょりべたべた。
靴も水が入ってぐちゃぐちゃ。
これは先週の赤岳と同じでそれだけで陰鬱になる。

しかし、それだけではすまなかった。

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岩が表れ、岩にはしっかりと苔がついている。
倒木にも苔がつき、気を付けないとすべってしまう。
苔むした岩場の道をさけて笹を踏むと、溝状の道が落とし穴になる。

そんな単調で長い歩きを過ぎると急に、開けた岩ごろごろ場に出た。

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これなら歩きやすい。

浮き石にだけ気を付けて上がっていく。

ガスが出てきて遠目はきかないが、大きな岩が点在し雰囲気がいい。

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岩の周囲の絨毯状のものは、ハイマツとシャクナゲ。

砂礫地に低く張っているのなら可愛いモノだが、ここのは違っていた。

はじめこそ隙間をなんとか通してくれてはいたが、すぐに本性を現した。
胸より高いハイマツの海に入ると圧されっぱなしになる。
こちらの猫だましや屁の突っ張りに対して相手の技は豊富である。
押しに張り手が来て、押し返していると、足をすくわれる。
足を蹴られて下を向いていると、強烈なラリアットを食らう。
もうこうなっては環境保護などという意識はふっとんでしまう。
ならばこうだと、ハイマツの上に乗ってぴょんぴょん渡っていく。

って、そんな上手いこといくわけがない。

点在する大岩にはところどころ穴があき、そこが水鉢になっている。
こんなのを見つけてしまった。

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しっかりと凍っている。

標高2600㍍地点でこれである。

この日帰宅したら、テレビのニュースで乗鞍の畳平の氷を取り上げていた。

なんやかんやでようやく中洞権現に到着。

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なによりもこの眼前に拡がる乗鞍岳の姿である。

これが見たいばっかりに苦労して上がってきたのだ。

ずっとガスがかかり、ちょうど切れて見えた景色に満足する。

ここで丸黒・千町尾根(日影平)からの道と合流する。
表示板には、日影平から12㌔、乗鞍山頂へはあと2㌔とある。

わずか2㌔、1時間かな。

展望も開けここからはるんるん気分の歩きになるはずだった。

いったん軽く鞍部に下り、上がり、再び、と行く。

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その前にすぐ、また背の高さのハイマツ帯が現れた。

くぐり抜け、乗鞍南面の広大な台地の一部を行く。

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賽の河原のようでもあり、高層湿原のようでもある台地を行く。

まずは眼前に立ちはだかる壁、屏風岩と大日岳に接近する。

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半分の1㌔は30分もかからず、快適に歩けた。

そこから、大日岳の山腹を巻く岩とガレ地のトラバース道になる。

ちょうど蓼科山の岩道を越えていく感じである。

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歩きながら、右手に見える南面台地が拡がっていくのを実感する。

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ガスの向こうに大きな丸い山らしきが現れた。

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あれが高天原か。

トラバ道なので冷たい風は避けられるが、陽が照ると暑い。

身勝手でぜいたくなものである。

しかし、足が重くて上がらない。
疲れがどっと出てきた。

そんなトラバ道を進むと突然、向こうに見えたのである。

本当に突然。

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剣が峰。

乗鞍岳の主峰の剣が峰3026㍍。

いるいる、人がいる。

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よく見ると、いっぱいいる。

大日岳トラバ道は剣が峰との鞍部に至り、そこで内部がのぞけた。

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乗鞍岳の大きな御鉢の中心、権現池。

複合火山の高所にある御鉢の池はどこでもかっこいいものだ。
水の色がいいし、水たまりなのに気品がある。
それはやはり、山の上で見るからこそだろうか。

さて、気を奮い立たせて最後の登りにかかる。

本当は、ずっと見てきた大日岳3014㍍の方に登りたかった。
剣が峰の奥宮に対して、奥ノ院でもある大日岳。
そこには分かってはいたがしっかりとロープが張られ、立入禁止。

剣が峰へは岩の間を縫うように上がる。

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頂上の人々を岩の間からずっと見上げているので焦るが、ここも螺旋状に上がる。

押すなへすなの人並みの横に張られたロープをまたいで合流する。

いやはや大変な人である。

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ここまで大変だったようで、ぐったり疲れた感じの人が多い。

みなさん、山頂で記念写真を撮るから順番待ち。

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ここは適当に山頂のにぎわいを撮り、山頂からの景観を撮る。

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ここで、複合火山乗鞍岳の全容の一部を見て再び、ため息。

池や頂が多くて、とても回りきれるものではない、時間がいる。

一度、しっかりと周回するにはどれぐらい必要か。

そんな間もなお、まだまだどんどん山頂に人が向かってくる。

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自分の来た方向を見ると、大日岳山腹にしっかりと道が見えた。

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自分が頂上の人を見ていたのと同様、頂上からも丸見えだったのだ、当然だけど。
ただ、ここにいる人はだれも自分がどこから現れたのかは分からないだろう。
立入禁止のロープの向こうを歩いていた変な奴、かな。

この日は天気の良い休日で、数百人いや数千人単位の乗鞍への入山者。

どうも居場所がない、ロープをまたいで急な岩場を下って退散する。

しばらく歩いて、振り返る。

華やかな喧噪の山。

もう少し歩いて、コーナーをまわると途端に静寂の山になる。

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目の前には雄大な乗鞍南面台地が広がり、自分ひとりの世界になる。

するとこの景観は、頂上や他の頂からはまるで見えない貸切の景色なのだ。

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トラバ道の途中で昼食休憩にする。

道の真ん中で座りこむのはルール違反だが、疲れているので許せ。
ま、何かあっても、次に人が通るのは一週間後ならラッキー、ぐらいかな。
中洞権現まで戻り、その後の道を思うと憂鬱になるが仕方がない。

ハイマツさんとはできるだけケンカせず、さっさと下ろう。
笹原の沢の足場は危なくて仕方ないから、ずっと笹をつかんで行こう。
今日はあまり休まず真面目に歩いたけど、時間だけはかなりかかった。
予定をかなり越えている。
林道もがんがん飛ばして下りていくが、気もちだけの焦り。
闇下など当然、論外。
ただ、明るい内に寄りたい所があった。

駐車地から10㌔ほどの所にある塩沢温泉露天風呂。
これもネットで見て、その雰囲気の良さと無料というのに惹かれた。
湯温が37度ぐらいでぬるいのが玉に瑕だという。
結論、猫舌の自分には相性がよく、のんびり浸かれて満足。
復路4時間の運転もなんとか切り抜けられた。

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コメント

お疲れ様でした。

阿多野郷からの乗鞍岳ですか、思い出深いコースですね。
実は、初めて乗鞍岳へ登ったのがこのコースでした。 2年前の5月(2009年5月1日)の残雪の時期に登りましたが、この時に分かったのは、このコースはもう少し雪の多い時期に利用した方が楽そうだということです。
残雪時期でも、上部のハイマツには苦労しました。 この辺りはクマも多いので、夏場は要注意でしょう。 しかし、この時期の状況がわかる貴重な山行記ですよ。(笑)

残雪の乗鞍岳へ → http://yama-kioku.blog.so-net.ne.jp/2009-05-06

※上記の山行記録は、記念すべき初めてのブログ記事です。(苦笑)

投稿: おど | 2011年9月25日 (日) 20時26分

おどさん、こんにちは。このレポを探しましたが、山行記録はこのレポの次からのが公開されていて、これは読めませんでした。もう丸黒・千町尾根も完遂された今となってはなつかしいでしょうね。自分は、2年がかりでようやく剣が峰に到着、まだまだ先が長いです。でも、隠れた(忘れられた)名山として、大事にしていきたい山域です。

投稿: たそがれ高洋 | 2011年9月25日 (日) 21時05分

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