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2017年1月 9日 (月)

映画『Start Lineスタートライン』

映画『Start Lineスタートライン』(112分)、2016年

監督・撮影・編集:今村彩子 撮影:堀田哲生
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『耳、聞こえません。
コミュニケーション、苦手です。
そんな私の 沖縄→北海道57日間自転車旅。』
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自転車で日本を縦断するロードムービー、でドキュメンタリー作品。
長い旅の主人公、今村監督は自転車に関してはほとんど初心者レベル。
伴走者にしてカメラ撮影の哲さんは、自転車店の専門スタッフであり空手家。

最近の映画『わたしに会うまでの1600キロ』『ロング・トレイル!』で共通すること。
主人公たちがこれから自分の行うこと(トレッキング)に対して初心者であること。
たてた計画がどんなに無謀(簡単?)でも、そのことすらほとんど分かっていない。
一応、多少の準備や練習はするけれど、ずぶの素人ではない、というぐらい。

だから予想通りとんでもないことがいくつも続けて起こって飽きられることがない。
不安はあっても身構える術もないのだから、怖いものもない。
そもそもその計画は、みんながやっているからたぶんできるだろう、という感じ。
どこかで必ず苦労し、それを乗り越えていく過程に期待して舞い上がってしまう。
実行し達成できたら、という結末の成功物語が見えてしまう。

という作品かと思っていたら、思わせぶりはすぐに軌道修正。
主題は明白。
他人との苦手なコミュニケーションのとり方を、旅を通して克服すること。
過酷な自転車旅の中に自分を追い込むことで、自分の殻を破ること。

それにしても始まりは『わたしに会うまでの~』主人公とまるで同じ。
見た目や格好、装備はいいんだけど、いろんな意味での経験が少なすぎる。
だからそれをなんとかするためには、少し遅いけど学習するしかない。
自転車旅で起こる日々のいろんな失敗や成功の体験から反省し満足する。
まさしく学習するって心理学用語の「経験による行動の変容」なんだから。

自分ひとりでくよくよ悩むだけではなく、周囲の人から学ぶことも多い。
ということで、課題は明白。
彼女の前に、常にそれが大きく立ちはだかる。

でもこれって彼女だけではなく、だれの身近にもいつもごろごろ転がっていること。
みんなが問題として分かってはいてもいつも悩んでいることなのだ。
それがとてもわかりやすいかたちで示され、結果も当然だろうと納得してしまう。
一緒に悩み苦しみながら、そうなんだ、それがうまくできないからいつも困っている。
それをいつも言いたいんだけど、言えばケンカになってしまって、それでおわり。
分かるんだけどさあ、それができない、というか。

自分のまちがいを認めず、分かるように言っても謝らない。
そんな仲間がいたら困るし、それが上司だったら地獄か陰で腐ってやる。
でも、計画上手で気配りがきき、なんでも簡単にできてしまう人が相手でも困る。

自分は山歩きが好きだから、今村さんと一緒に行動すると堀田さんと同じ態度かも。
だからといって堀田さんとうまくいくかといえば、最初だけかもしれない。
お互い要求水準が違うと思うから、どこかで衝突し、ケンカ別れになるだろう。
そうならないためには、お互いの意見や考えを充分に出し合って、話し合うこと。
その上で、認めるところは認め、譲るところや止めるところをはっきりさせる。
そんな包容力があり、譲り合いの精神というか、寛容のこころ。
口先だけで「寛容」と何回でも言えばいいわけでなく、態度であらわせないと。

きれいごとは以上、実際はまず無理だから自分は単独行動を取る。
自転車旅や山歩きなら、無理して相手にあわせなくてもそれでいい。

ところが結婚とか命がかかわる情況だったら、お互いで解決するしかない。

無視やケンカで済むならいいけど。

結局、相手と何らかのかたちで意思疎通をはからないとそれもできない。
それは普通、ことばが解決すると思っていたけど、浅はかな考えだった。
自分が普通だと思っているその普通は、一部だけで通用する特別な普通だった。

今村さんの作品は、そんな「普通」に気がつける人でありたい、とずっと思わせてくれる。
ケンカするにも、協力するにもそれがないと始まらない。

人間関係って本当にむずかしいし面倒くさい。
だけど勝手な思い込みで相手を避けるよりは、相手の目をじっと見て。
それが人間関係のスタートラインって、御意。

お勧め度は ★★★★  刈谷日劇にて

今村監督の舞台あいさつがあり、話の中心も当然そのこと。
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でも監督、そんなことくりかえさなくても、映画でしっかり分かりましたぜ。

それから監督、余分なことを言って申し訳ないけど、太ももが細くなってしまって、残念。
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