欧州:パリの憂鬱
欧州:パリの憂鬱
世界中からたくさんの人が集まるこの街は世界の文化の中心、それは歴史の賜物。
いろんな人がそれぞれの都合や事情があってこの街に集い、必死に生きている。
そんなパリへふたたび、ミュゼ(美術館)で美を学び・・・。
【訪問日】2019年3月中下旬
【地 域】欧州:フランス・パリ、ベルギー・ブリュッセル
【天 候】 ほぼずっと晴れ、朝晩は冷えた
6年前、ロンドンからパリへユーロスターで来て1週間過ごした。
パリのノルド駅に着き、スーツケースを運ぼうとすると、盗まれていてなかった。
必死に探したがどこにもなく、駅の事務所や警察に言っても相手にされなかった。
とにかく宿へと地下鉄に行くと、切符売り場で親切な紳士に金を騙し取られた。
そんな散々な入都だったが、再びロンドンへ戻るときには垢が少し落ちたようだった。
今回はドゴール空港からRER(高速郊外鉄道)で入る。
ミュージアムパス6日やフォルフェ・パリ・ヴィジットは空港で購入する。
トラベラーズ・チェックも手数料などを聞いて市街地で現金化することに決める。
ここまでは順調だった。
だと思う、たぶん。
市内へ入り、モンマントルの宿へは地下鉄で行き、すぐに見つける。
夕食の買い物でも、近くにスーパーを見つけ、入る。
そこで、最初の洗礼を受ける。
買い物かごを持って数段の階段を下りていくと、後ろからどんと押される。
どうも階段で躓いたようで、つんのめって自分に当たったようだ。
すると、入口の警備の人がこちらを見て何か言ってる。
こちらを見て怖い顔をしているので、何かいけないことをしたのか、と。
警備の人に近づいていくと、彼は自分のカバンを指差した。
そうか、カバンを持って入ったのがだめとか・・・。
カバンを見ると、なんとしっかりチャックがあけられていた。
犯人がどうのこうのというよりも、そういうカバンを持っているのがまずい、と。
確かに背負うかたちのリュックやザックは開けて取られやすい。
自分の、旅では常に愛用の一本掛けのカバンが格好の標的になっている。
ということで、その後はしっかり保持しつつ注意を怠らないようにする。
それでも気がついただけで3回ぐらい、危ない目に会う。
エッフェル塔の近くの地下鉄では前回も被害にあいかけたのでしっかり注意し用心する。
それでも4人組の少女たちが普通に近くに来ていて、地図を見ようとカバンを見ると。
えっ、開けられている。
すぐ目の前には、伏目がちに笑みをうかべる先の少女のひとりが平然としている。
騒げば仲間もいてさらに面倒になる、だからふつうを装って地図を見てチャックを閉める。
次の駅で降りて、別の車輌に急ぎ乗ると、いつのまにか彼女たちが近くに来ている。
だから次の駅でもう一度、フェイントを掛けつつ、走って逃げる。
そうなのだ、このパリの街では自分なんか、絶好のカモなのだ。
金目なものはほとんど持っていないが、搾り取ればなんとかなるカモ、というやつ。
体力的にもすがた格好でも、赤子の手をひねるぐらい簡単な標的。
寒さ対策で厚手の服を着るよりも、機能を重視した薄手のを重ねるほうが旅にはいい。
山でもどこでも今まではそう思って、それでなんとかできていた。
この街では、鎧のような厚みのある丈夫な服でしっかりと護るのが大切らしい。
ということで、この旅はずっと憂鬱が先行し、どんよりとしたまま。
せめて覚書。
ユトリロがよく描いていたモンマントルの丘、サクレ・クール寺院へ朝早く行く。
丘へ上がる石段は長いが、振り返ると静かな街並みに朝日がまぶしい。
寺院も横顔も輝いている。
正面にまわってパリの街を見る。
すぐ目の前、というか眼下におかしなものがある。
このオブジェ、ちょっとやりすぎ。
もちろんオブジェではなくて、この朝の一時だけだったようだ。
ふだんは人がいっぱいらしい周囲の観光名所を散歩する。
銅像、みんな触るのはもちろんそこだけ。
ルノアールのムーラン・ド・ギャレットはここ。
こちらはムーラン・ルージュ、ムーラン(風車)つながり。
日が上がり、寒かった花壇に花が咲く。
数日後には、ストの人の花が立派に咲いていた、これはテレビ画面。
オルセー美術館のレストランから見えるはずだけど、写真が下手。
イエロージャケットのストといえばノートルダムで会う。
ここではオレンジジャケットが多かった。
別の日にもあり、その所為で地下鉄の駅や美術館が閉鎖されパスが使えなかった。
ルーブル、オルセー、オランジュリーへは2回ずつ行く。
あまりに作品が多いので、見る場所を限ったが、集中力がすぐに切れて残念。
マルモッタン・モネやロダン、ピカソ、マイヨール美術館は今回が初めて。
ロダンのデッサン、ドガや他の人のも含めてあることに気が付く。
彼らが追い求めたものはつまりそういうことか、と納得。
それにしてもピカソ、彼の美術館。
彼が死ぬまで売らずに手元においていた定評の作品群。
1本の針金で簡単(?)に創ったこれ(写真は平面、実物は立体)にはびっくり。
マイヨール美術館では、印象派の作品を集めた特別展が開催中。
で、さりげなく飾られていたのは。
昨年、名古屋市美術館ではセンターと扱われた作品、イレーヌ嬢がさらりとあった。
郊外ではパリ公園にイタリア、ローマの松を見て、ヴァンセンヌ城。
反対側に行けば、現在・未来のパリことラ・デファンス。
この道の先をたどっていき、しっかりと望遠すると
あっと驚く建築物は、やっぱり印象が強い。
街中の壁画もしゃれてる。
もちろん、1日だけ訪れたベルギー、ブリュッセルの王立美術館もすごい。
ブリューゲルやボス、マグリットと線が濃い。
でも極め付きには地下8階でやっとご対面。
なんともはや。
どこもかしこも街並みはきれいだった。
ただ今日も、かつての石畳はコツコツと張り替えられていく。
そして忘れていたこと、古い情報は自らの首をしっかり絞めてくれる。
空港や「地球の歩き方」で確認したトラベラーズチェック、どの銀行や郵便局でも使用できなかった。
美術館めぐりの教科書としては次の2冊がとても参考になった。
706ハ・布施英利『パリの美術館で美を学ぶ、ルーブルから南仏まで』光文社新書
723ヒ・伊集院静『美の巨人、フランスへ』小学館
布施さんのは薄い本なので要点中心だが、短い文でしっかりまとめている。
マルセイユの場面は親近感が半端ではなかった。
伊集院さんのは2000年頃週刊ポストに連載されていたもの。
週刊誌での人生相談を以前読んで、あまりよい印象を覚えなかった。
絵が好きという一点でしっかり作品を見ていて、他の評論家より分かりやすい。
それは65歳から美術に目覚めた大橋巨泉にも通じるものがある。
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