豪州:ウェリントン山(Mt.Wellington)標高1270m
これぞテーブルランド、広大にして展望絶佳
オーストラリアの南、タズマニア島は自然豊かな観光地である。
ディスカバー・タズマニアと銘打って60のハイキングコースを定めている。
その中で最初の1番に掲げられているのがホバート市のウェリントン山。

【訪問日】2014年9月26日(金)
【地 域】豪州タズマニア:ホバート市郊外(Hobart)
【天 候】 晴れ時々曇り
【コース】タズマニア60ショートウォーク1番
”Organ Pipes Walks、Mt.Wellington”
ザスプリングズ(The Springs)の駐車場、起点
P11:00--ピナクルトラック--11:30ジグザグトラック--12:00頂上--南ウェリントントラック--
--13:00頂上--車道--13:10パノラマトラック--13:25車道--13:40オーガンパイプストラック--
--14:10ピナクルトラック--14:35P
3年前、タズマニア島を訪れるきっかけになったのは世界自然遺産のクレイドル山である。
その特異な山姿と美しさに惹きつけられ訪れたが、実物はそれ以上で本当に素晴らしかった。
その時、タズマニアの資料を眺めていて気になっていた山がもうひとつあった。
最も高いオサ山ではなく、針の山のような、これまた特異な姿のウェリントン山である。
そこはアクセスも容易で、州都ホバートから近くて(市内で)、簡単にいけるという。
地形図や登山道についてはホバート市中心のインフォメーションセンターで入手する。
壁にそれが掲げてあり、入用な人はコピーを頼め、とあったので申し出ると現物が頂けた。
それを見るとこの山が如何に市民生活にとけこんだ山であり公園であるか分かる。
それこそコースが何十本もあり、東西南北から入り乱れ、ぐにゃぐにゃに交差している。
山の形はどうみても直方体の山塊で美形ではないが、公園指定されよく保護されている。
ただ何よりも興醒めなことは、山頂まで立派な舗装道路が走っていること。
そこはタズマニアの観光地のひとつとして観光ツァーの目玉的存在でもあった。
それでもガイド本でみた針山の印象が強烈だったので、目的地として優先的に選ぶ。
ホバートの街中をぬけて西郊外へ、片側四車線もある道路は車が多すぎてたらたら渋滞。
途中からは表示どおり一本道となり、目指す出発点ザスプリングズに到る。

主要なハイキングコースとしては、山のふもとのファーンツリーからザスプリングズまで4コース。
今回は時間の都合でそれらを省略し、ザスプリングズから山頂を目指すという軟弱な歩き。
ザスプリングズの標高が680mで、山頂までの標高差は約600mということで、まっ許せ。
ファーンツリーの標高は420mで、ザスプリングズまでは40分から1.5時間というのが相場。
ということで車でザスプリングズに上がり駐車、そこには休憩所や公園・トイレなどしっかりある。
ここからも主なコースが4つほどあるが、選定1番のオーガンパイプスへはピナクルトラックが普通。
そもそも選定コースは登山道の一部分だけを示し、そこを往復3時間でとはあまりに淡白すぎる。
入山、ピナクルトラックは一定の斜度を保ってほぼまっすぐにオーガンパイプ道へと向かっている。


楽ではないが急でもないのでぐんぐん高度を稼ぎ、右手には市街地が見え隠れする道だ。

山側にはここら辺特有のブッシュがあり、単調そうな歩きに花を添える。

やがて立派なベンチのある、ジグザグトラックとオーガンパイプストラックの分岐につく。

選定コースのオーガンパイプス道だと山頂へはどうみても遠回りなのでまずはジグザグ道で行く。

絶壁に近いところを上がっていくので必然的にジグザグな道になるが、それにしても安易な名前だ。
いや、とても分かりやすいネーミングなわけで、他のコースも含めてみんなそんな感じ。
ジグザグトラックからは山の側面がしっかりとみられ予想通り特異な光景が目に入ってくる。

雑誌ニュートン400号でも紹介された、柱状節理の山の特徴をしっかりと示している。
これはそのまま後で歩くことになるオーガンパイプストラックの特徴でもある。
岩柱の整った林立を見ながら少し息が切れた頃、山頂台地に上がる。

前から高いタワーや鉄塔が見えてはいたが、そんな建造物が立てられる広い場所のようだ。
山頂台地は広大で、針の山というよりも、同じような岩があたり一面にごろごろしている。

日本だと蓼科山の山頂が有名だが、あそこは少し凹んでいるから微妙に違うともいえる。
自分の印象にあるこの山のあの針山はどこで撮ったものか、と疑問がわいてくる。
ジグザグトラックはウェリントン山の山頂台地へは横っ腹から上がってきている。
山頂方面へ少し進むと、サウスウェリントントラックが合流してきた。

地形図で見るとその道は山頂南端から台地を縦断するように進んできている。
ここで寄り道というか、この台地を少し歩き回ってみたい気分だったので実行に移す。
前方には針山のような盛り上がり部分も見えるのでせめてそこまでは行きたい。

サウスウェリントン道は整備こそされているが、岩の上を歩いていくので歩きづらい。
なんやかや進むが意外と時間がかかり、針山らしきに近づくとそうでもなく、南端へ。

うーむ残念、それらしい所は発見できず、でもまあ面白い道を歩けたと小満足。
台地の中心こと山頂へ引き返していく。

遠くからへそのような山頂を見ていたが、近づくと人の姿がはっきりしてくる。

それこそ入れ替わり立ち換わりする人がいる。
そういえばここに来るまで会ったのは数人にすぎない。
平日だからそんなものかと思ったが、今、目の前に見える人はかなり多い。
となりに駐車場が見えてきてようやく納得する。

そういうことか、みんな車で来ているのだ。
ただ、歩く世界と車で来る世界は、しっかりと分かれていた。
車で来た人は山頂の少し高い岩で記念撮影したら皆、展望台へ向かっていく。

およそこんなところでは似つかわしくない立派な建物だった。
そのむこうにはホバート市街や海が広がっているのが見える。

こんなに容易に、それこそ360度の展望と絶景が観られれば、観光名所になるはず。

山頂のすぐ下には石造りの避難小屋らしきもの。
昔はこれだけだったと思うが、なんだかほっとする、中は無人。
展望台には厚い扉があり、開くと、これまたなんとまあ。


外に出て、設えられた回廊を歩いても良し。

これは何、と思うが、こんなに立派だと汚されないだろうなあ、別荘もといトイレ。

時間も押していたので車道に入り、パノラマトラックへの入口を探す。
せっかく歩く世界を目指してもコースをつなぐためには車道を一部使わなければならない矛盾。

パノラマトラックは車道をショートカットするようにつけられた道だが、悪くはない。


ふたたび車道に出て、車に注意しながら今度はオーガンパイプストラックの入口を探す。


予想通りこの道はトラバース道で、岩崩れした部分は少し慎重に進む。


右の山頂台地方面を見上げれば、そそりたつ壁だけが目に入る。

柱状節理の典型的な様はなるほど、教会のパイプオルガンだ。
しっかり注意書きもあって、「道を外れてこの壁を登るな」だそうで、どこにも猛者がいるんだ。

ほとんど水平の道はやがてジグザグトラックにぶつかりピナクル道に入る。
あとはずんずん下るだけ。
この周回コース、ペースを結構あげたので足にはとてもきつかった。
このコースもよかったけど次回があればサウスウェリントントラックかな。

それから数日間は別のところへ行き、ふたたび時間ができたので再訪する。
天気の良い日で、今度は車で(あれっ)、上がる。
山頂からこの前歩いたテーブルランドをあらためて眺める。

眺めるだけで歩いて踏み込む気にはならず、車と歩く世界の境界をしっかりと感じる。

広い台地の遠くの方は地形図によると「死の地(Dead Island)」だって。
おおかた進入禁止にすることで水源として保護しているのではないか。
でもこんな素晴らしい山、歩いて登らないと本当にもったいない。

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