香港

2010年6月26日 (土)

映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』

映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』 ジョニー・トー監督

 主演:アンソニー・ウォン、ラム・カールトン、ラム・シュー、ジョニー・アリディ

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この監督でこの俳優となれば諸手をあげて大歓迎、大甘になるのは必然。

じっと待って封切りの朝一番に映画館へ。観客の数にも少し安心。

前作(?)『ザ・ミッション非情の掟』と『エグザイル絆』は、その年度の自分の映画この十本でともに1位にあげている。個人的なもので、感覚的な見方・評価だからなんの価値もないが、期待と楽しみと、その世界に再びひたれる喜びを感じていた。

雨の中、ガラスに映る人影を残しながら、玄関チャイム。

当然、開けたらあかんやろ、と思うまもなく、ガガーンと始まる。

だらだらする所がなく、進むところは一気に、でも魅せる所はじっくりと。

いつもながら、緩急のつけ方、しぐさや映像の美しさといったらない。

マカオと香港との行き来、ありえないが小さな船を使う。

でも、香港のビル街を背景に甲板に立つ姿を見ればこれしかない。

原題は『復讐』だが、邦題の、冷たい「雨」が象徴的だ。

事件は雨の時に起こり、殺し屋たちの雨合羽、傘をさした人混みが印象的だ。

クワイ、チュウ、フェイロクの殺し屋三人組というよりも、ウォン、カールトン、ラム・シュという俳優の息のあったやり取りや個性に、期待した答が全て返ってくる快感を感じる。

アンソニー・ウォンの冷静さは素晴らしいし、ナンチャン似のカールトンもいい。

そして、笑いとおいしいところはラム・シュの十八番、というより見ている方はみんな前作を知っているのでピーナッツとか食べるシーンには勝手に反応してしまう。ラム・シュのおぼつかない英語もいい味といえそう。

そんな三人組と白人が中盤、香港ではどこにでもある公園のバーベキューサイトで、そこは休日ならどこでも家族連れと仲間連れでいっぱいでもあるが、殺すべき敵とその家族と対峙する。

ここで十分、間を取り緊張を保つ。でも、本来なら終盤でもよいはず。

盛り上がり結末になだれ込みながら、銃撃戦で・・・。

ここで、この映画のリズムが崩れる。

この映画、ジョニー・トー組にジョニー・アリディというビッグが加わってどうか、である。

世界的に有名な歌手・俳優をどう使うか、絡ませるか。

確かにルコント監督『列車に乗った男』のアリディは渋かった。

お互いの仕事・人生に静かに思いをよせる、しびれるような作品だった。

でも、悲しいかな、どんな外国人名優に対しても香港俳優がひけをとることはないのだ。

もとい、チームを組んだ香港俳優が相手だから難しかったと思う。

その後、ボスの速攻逆襲とアパートでの銃撃戦、三人組を見失う傘の人波など相変わらず見せ場は多い。

古紙を固めたブロックを転がす所など大陸の歴史戦だ。

でも、ジョニー・アリディを活かすために繋げたシーンはどうしても無理がある。

殺し合いばかりしてるバカな男に対して、生活と命を育んでいる肝っ玉なビッグママ(ミッシェル・イエ)だけが救いだ。

ここらへんも香港らしいところ。

でもこの作品、三人組が消えた時点で映画が終わった、と感じてしまう。

そこまでは最高評価、後もいいけど・・・、ということで。

お勧め度は ★★★★       シルバー劇場にて

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2010年1月 7日 (木)

香港:覚え書き

年末は03年~05年と毎年通った香港。
どうして香港か。

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きっかけは2001年3月のネパール、アンナプルナ・トレッキング。
カリ・ガンダギ河沿いのバッティ(民宿)で同宿した彼女たち。
そこには、ドイツ、スイス、アメリカといろんな国から来ていた。
その中で、白人諸君と堂々と話し、人気を集めていたのが香港娘2人組。
宿の味付け調理に異議申し立てし、自分達がかまどの前に立っていた。
我々日本人三人組は、ガイドさんがついていても、いつも気後れしていた。
そんな自分達に、向こうから話しかけてくれたのも彼女たちだった。
女優のミシェール・ヨーに似た林(ラム)さんは、ハイIQガールだと名乗った。
日本のアニメに詳しくて、漢字・アルファベットを混ぜて説明してくれた。
ポーター(荷物運び人)の荷物を、見習いポーターだと言って運んでいた王(ウォン)。
彼女はなんと国泰(キャセイパシフィック)航空のフライトアテンダントだった。
このわずか数日の交流と、その後の数回の手紙やメールのやり取りですっかり香港ファン・キャセイ会員になってしまった。
写真も撮らずに別れ、その後は一度も会っていない。
いつかキャセイの機内でばったりご対面できれば面白いのだが、たぶん忘れられているだろう。

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さて、4年ぶりの今回。
その間の3年は台北・台湾でまったりしていた。
のんびりと落ち着け、温泉でゆったりしようと思えば絶対、台湾だ。
香港は、人が多くてあわただしいし、とても世知辛い。
朝から深夜まで、東京のど真ん中の混雑がずっと続く。

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ならば何故に。
クリスマスから新年まで、ライト・シンフォニーという特別のイルミネーションが加わる。
毎晩8時から15分だけ、これがまあ、みものと言える。
ふだんから百万ドルの夜景と言われる街である。
人混みが大嫌いな自分だが、一年に一度ぐらいバチにあたらないと、罰が当たる。
カオルーン半島側のチムシャッツイから、香港島を見る。
香港島のワンチャイ(湾仔)から、カオルーン半島を見る。
フェリーから、両方を見る。
そんなアホなことを試してみる。

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ん、ちっともたいしたことがない。
以前の、「何だこれ」、がまるでない。
人間だけは滅茶苦茶多い。混雑は尋常ではない。
地下鉄の駅までわずかな距離だが、人が多くて進まない。
有名なネーザンロード他が歩行者天国になっているのに、目の前の広い道はそのまま。

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警官が随所に立って、車も人も通行禁止。じゃあ、何。
パレードでもあるのかと、みんなが道路を見ている。
何もない。緊急事態に備えているだけなそうな。

ワンチャイではこれ。

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コスプレの集会があり、夜まで居残ってくれていた。

香港島セントラル(中環)のマンダリンホテル横のあの広場も変わっていた。
ツリーイルミネーションがなくなり、まあ質素なものに代用。

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何よりも通路が、どこもかしこも彼女たちに占拠されていた。

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フィリピンからの出稼ぎお姉さん達だ。
高学歴の彼女たちは、本国では仕事がなく、メイドさんとして香港に来ている。
たまの休日、こうやって仲間同士で集まるのが唯一の楽しみなのだろう。

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夜景を見る一番のポイントと言えば、ザ・ピークである。
有名なピーク・トラムで上がって、タワーやギャレリアで過ごす。

昼間来て、廬吉道(ルガード・ロード)や夏力道(ハーレック・ロード)に入る。

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ここは、ホンコン・トレイルの一部であり別名、朝散歩道でもある。
夜、こちらに一歩足を踏み入れれば素晴らしい夜景が拝める。

そんなこんなの香港。

数年で、道路や交通機関、街の様子の変化はすさまじいものがある。

東アジア共同体構想が進めば、当然ここが、首都キャピトルになることだろう。

これも香港なら、

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これも、香港だし、こんなのもいる。

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これは日本でもおなじみだ。

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まとまらない、おそまつな覚え書き。

また、すぐに行きたくなるから、いいか。

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2009年12月31日 (木)

香港:馬鞍山(マーオーシャン)

香港で一番印象深い山と言えば、馬鞍山。
標高702㍍、でもその山姿は2千㍍級。
5年前、西貢から昴平に上がり、大金鐘(ピラミッドピーク)を経て馬鞍山へ。
のち、牛押山、吊手岩から馬鞍山村へと周回した。

再訪の今回は、反対側の沙田から昴平へとした。

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【山行日】 2009年12月24日(木)
【山 域】 香港:九龍半島 馬鞍山702㍍
【天 候】 晴れ
【形 態】 周回一部往復 単族 軽装快速
【コース】 沙田、亞公角10:00--10:30梅子林--11:00女婆アウ--11:20梅子林--

11:40茅坪--12:20昴平--13:10馬鞍山13:25--14:00昴平--14:30村--15:20馬鞍山駅

香港で人気の山が日本でも知られるようになったのはみなみらんぼうによる。
山と渓谷で紹介したその山姿は読者を魅了した。
「世界で一番高い700㍍峰」
その高度感、登り応え、展望どれをとっても一級品。
香港に到着し、ホテルに入ったのが前日深夜というより、0時を過ぎていた。
天気が良い初日にあえて選ぶ。
この日を逃すともう機会が訪れない気がした。

ただ、登山口に不安があった。香港の山歩きではいつもそう。
「地図通」という道路地図だけが頼りなのだ。
沙田の町はずれ、亞公角でバスを降りる。

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道路の先はるかに見えているのが馬鞍山のはず。
梅子林までは車道を歩く。舗装道路をひたすら上る。
散歩運動している何人もの老人とすれ違う。
梅子林でいくつか道が分かれる。
その先にハイキンググループがいる。
部落の細い道は、民家の軒下を通っていく。

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彼らを抜くと、樹林帯に入り、苔むした沢沿いの道を上がる。
アウという鞍部に着くと、数人が休んでいる。
馬鞍山のことを尋ねると、道が違うと言う。
梅子林まで戻り、右手の細い道に入るらしい。
馬鞍山は危険なので、十分に気を付けろとも言う。
がっくりして戻る。
先ほど抜いたグループのリーダーからも説教を受ける。
間違えた道には大きな犬がいた。
なんだ、だから避けてしまったのだ。

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遅れを取り戻すべく、とにかく茅坪を目指す。
茅坪や交差点で、指示標識に間違いはなかった。

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すぐに尾根道になり、右下に西貢の海が霞んでいる。

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振り返ると、山姿そのままの水牛山(バッファローピーク)だ。

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前方には、真打ち(?)前座のピラミッドピークが見えてくる。

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パラグライダーが気持ちよさそうだ。
日差しがきつく、水の心配が出てきた。700ミリリットルで大丈夫か。
昴平はすすきや草付きの、広い高原のようだ。
でも、馬鞍山はまだ遠い。
計画では登り3時間、下り2時間。13時山頂だ。
ミスした時間が惜しい。
眼前の大金鐘(ピラミッドピーク)は巻くしかない。
巻道は一旦下っていく。もったいないことだ。
トラバースして長い階段状の登りに入ると遠くに馬鞍山が見え出した。

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遠い。とても遠い。
大金鐘との鞍部から少し上れば、尾根歩きに変わる。
気分も晴れて歩きも楽しくなるはずだ。
のどが渇くが節約する。これは本当にまずい。

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馬鞍山への最後の登りで、家族連れが途中で諦めた。
上から下りてくる若者もへっぴり腰だ。
確かに滑りやすい急坂だ。
あと少し。でも予定時刻が迫ってくる。
13時には引き返すのだ。とてもきつい。
自分で勝手に決めたことだが、この目安が大事なのだ。
軽装快速という歩き方は、危険・遭難と背中合わせだから単純なきまりが大切。

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結局、最後の登りはそれまでの無理がたたった形になった。
山頂のコンクリート柱の日陰に倒れこむ。
めまいがする。食欲はまるでない。
この少しの日陰がとてもありがたかった。
少しだけ残して、水をかみしめながら飲む。
うとうとする。

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今日はとても、牛押山・吊手岩を周回できそうにない。
距離的には短いのだが、少しヤブコギになる。無理はできない。
多少、生き返った所で素直に元来た道を慎重に引き返す。

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下りがとても楽に感じた。
樹林帯に入り、沢水で冷やす。満足感からようやく安堵だ。
BBQサイト村でバス時刻を見る。
1時間以上ない。まだ歩ける。
舗装された車道を鉄道駅まで下りていく。
車専用道路を越えていくのが難しい。
親切な老夫婦が駅の方角を教えてくださり、無事到着。
帰りは、5つの路線をオクトパスカードで乗り換えた。

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総括

馬鞍山は本当に登り応えのある山である。
天気加減で当日急に決めたことと、コースミスは反省点。
気になるのは香港の天気。
スモッグが酷すぎる。大陸からともいうが数年でこの変化は大きい。

東京から団体ツァー、ガイド付きで来るとも。商売はアイディアか。

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2009年12月30日 (水)

香港:鳳凰山(LANTAU PEAK)

狭い土地に700万人ほどの人がひしめき合う街、香港。

その土地の7割ほどが山地で、険しい山が連なる場所でもある。

植民支配した英国人が自分達の快楽のために縦横にハイキングトレイルを造成した。

亜熱帯植物と高層アパート群が隣接し、スモッグが覆う街でもある。

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【山行日】 2009年12月25日(金)

【山 域】 香港:ランタウ島 鳳凰山934㍍ (写真は4年前)

【天 候】 曇り 濃いスモッグ

【形 態】 ピストン 軽装単族

【コース】 天壇大佛、昴平13:20--14:05頂上14:20--14:50昴平

香港で2番目に高いランタウピークの登山口は東側の伯公アウからと、西側の昴平からが一般的である。東から登り西に下りるのが一番だが、天気と時間とバスの都合で涙を飲んで往復とする。

飛行場からすぐの東涌からバスで(最近はゴンピン360というケーブルゴンドラが観光的)大仏のある昴平へ行く。ポーリン寺、大仏、瞑想徑など観光名所でもある。

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寺の横を抜け、瞑想徑と茶園を抜けるとランタウトレイルと登山口が示される。

標高はすでに500㍍近い。

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見上げると壁が覆い被さってくる。

こんなのを登るのかと心配になるがそこはそれ、中国なのである。

山頂まで石で階段が造られている。

何百年か後にはチョモランマの頂上まで石段が延びるというのは信じた方がいい。

しかし、もわっと暑い。スモッグが厚いし、おかしな天気である。

山肌をぬってまじめに高度を稼いでいく。遊びがないのでどんどん登る。

中程までくると双耳峰がガスの向こうに見え隠れする。

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すぐに樹林帯を抜け、草道の急傾斜から岩稜帯になる。

寺から気楽に登る人が多いらしく、何人もとすれ違う。

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本格派あり、ピクニック気分あり、サンダル履きあり。

岩肌が険しくなり、前を行くグループがどんどん近づく。

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彼らを抜いて、ほどなくして頂上に着く。

頂上での表情は万国共通。

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真ん中の太いコンクリート柱が山頂を示す三角点のようなもの。

右に少し見える屋根は、避難小屋(石室)。

みなさん、よくしゃべり、よく食べ、ゴミはゴミ箱(頂上にある!)へ。

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下りは、膝をがくがくさせながら石階段下り。

登山口付近には瞑想徑を撮る娘さんたち。

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ガスで、展望がほとんど得られなかったこと。

コースもショートピストンで、山気分にはイマイチ。

でも、香港国際空港の南にどんと聳えるこの山の迫力はホンモノ。

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2009年12月22日 (火)

香港:この山へ (後で編集)

【山行日】 2005年12月の今頃

【山 域】 香港:ランタウ島

年末、休暇を取って連続でここへ来ていた。

視界はともかく、展望がよく、気持ちの良い歩きができる所。

人混みで有名だが、かっこいい山も多い。

こんな感じ。

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いくつものピークを越えていく。

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で、この山へ着いた。

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むこうにとても気になる山がある。

近づく。

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他の山とは違って、迫力がある。

左のピークへ登って見ると。

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あの山に登りたい、と思ってから4年も過ぎてしまった。

今年は是非。

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ということで、しばらく出かけます。

ケータイというものを持たないので、その間、更新はできません。

山歩き、電影、音楽どれもこれもに寸足らずの接近を試みます。

年内には1本ぐらい書けるといいんですが。

いつも歓迎光臨、よいお年を。

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2009年10月30日 (金)

映画「コネクテッド」

香港映画「コネクテッド」はベニーチャン監督。

ハリウッド映画「セルラー」のリメイク。

しかしこの作り直しは元を完全に凌いでいる。

どこから見ても香港映画そのもので、身体をはったスタントが満載。

突っ込みどころ満載、危険は承知、そこがサービス満点。

そして、ほろりさせるとさせる部分もしっかりとある。

おどおどしっぱなしのサラリーマンにルイスクーがはまり役。

ニックチョンが警察関係というのもいつも通りでわかりやすい。

リュウイエって黄金甲のおどおども、山の郵便配達の好青年も、そしてここでのこの存在感怖さはなんなんだ、という感じ。

人生を深く考えることはないが、こんな映画も時にはうれしい限りだ。

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