映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』
映画『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』 ジョニー・トー監督
主演:アンソニー・ウォン、ラム・カールトン、ラム・シュー、ジョニー・アリディ
この監督でこの俳優となれば諸手をあげて大歓迎、大甘になるのは必然。
じっと待って封切りの朝一番に映画館へ。観客の数にも少し安心。
前作(?)『ザ・ミッション非情の掟』と『エグザイル絆』は、その年度の自分の映画この十本でともに1位にあげている。個人的なもので、感覚的な見方・評価だからなんの価値もないが、期待と楽しみと、その世界に再びひたれる喜びを感じていた。
雨の中、ガラスに映る人影を残しながら、玄関チャイム。
当然、開けたらあかんやろ、と思うまもなく、ガガーンと始まる。
だらだらする所がなく、進むところは一気に、でも魅せる所はじっくりと。
いつもながら、緩急のつけ方、しぐさや映像の美しさといったらない。
マカオと香港との行き来、ありえないが小さな船を使う。
でも、香港のビル街を背景に甲板に立つ姿を見ればこれしかない。
原題は『復讐』だが、邦題の、冷たい「雨」が象徴的だ。
事件は雨の時に起こり、殺し屋たちの雨合羽、傘をさした人混みが印象的だ。
クワイ、チュウ、フェイロクの殺し屋三人組というよりも、ウォン、カールトン、ラム・シュという俳優の息のあったやり取りや個性に、期待した答が全て返ってくる快感を感じる。
アンソニー・ウォンの冷静さは素晴らしいし、ナンチャン似のカールトンもいい。
そして、笑いとおいしいところはラム・シュの十八番、というより見ている方はみんな前作を知っているのでピーナッツとか食べるシーンには勝手に反応してしまう。ラム・シュのおぼつかない英語もいい味といえそう。
そんな三人組と白人が中盤、香港ではどこにでもある公園のバーベキューサイトで、そこは休日ならどこでも家族連れと仲間連れでいっぱいでもあるが、殺すべき敵とその家族と対峙する。
ここで十分、間を取り緊張を保つ。でも、本来なら終盤でもよいはず。
盛り上がり結末になだれ込みながら、銃撃戦で・・・。
ここで、この映画のリズムが崩れる。
この映画、ジョニー・トー組にジョニー・アリディというビッグが加わってどうか、である。
世界的に有名な歌手・俳優をどう使うか、絡ませるか。
確かにルコント監督『列車に乗った男』のアリディは渋かった。
お互いの仕事・人生に静かに思いをよせる、しびれるような作品だった。
でも、悲しいかな、どんな外国人名優に対しても香港俳優がひけをとることはないのだ。
もとい、チームを組んだ香港俳優が相手だから難しかったと思う。
その後、ボスの速攻逆襲とアパートでの銃撃戦、三人組を見失う傘の人波など相変わらず見せ場は多い。
古紙を固めたブロックを転がす所など大陸の歴史戦だ。
でも、ジョニー・アリディを活かすために繋げたシーンはどうしても無理がある。
殺し合いばかりしてるバカな男に対して、生活と命を育んでいる肝っ玉なビッグママ(ミッシェル・イエ)だけが救いだ。
ここらへんも香港らしいところ。
でもこの作品、三人組が消えた時点で映画が終わった、と感じてしまう。
そこまでは最高評価、後もいいけど・・・、ということで。
お勧め度は ★★★★ シルバー劇場にて
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