山歩き:宝の山、会津磐梯山
山歩き:宝の山、会津磐梯山
火山の代表的ジオパーク、タモリも絶賛の宝の山へようやく行き、歩く。
胴沼のむこうに広がる火口壁と櫛ケ峰こそ垂涎の景色、火口原のシラタマノキ群生。
頂上周辺は紅葉で覆われ、午後から出発の少し無理した歩きが報われる。
【山行日】2018年9月28日(金)
【山 域】福島県、会津磐梯山
【天 候】晴れ時々曇り、風強し
【形 態】周回ほんの一部往復、 軽装
【コース】裏磐梯スキー場駐車地、起点
P12:20--12:35スキー場上部分岐--12:40胴沼12:52--13:23八方台分岐--14:27弘法清水--
--14:50山頂15:00--15:15弘法清水15:20--15:45櫛ケ峰鞍部--16:12火口原--
--16:38スキー場上部分岐--16:51P
東北の山々の豪華な紅葉を観光パンフで見た相棒が、それらは簡単に見られるものと早合点。
見られたらいいねと賛同しつつ、スキマを縫って山歩きも可能だろうとアッシー君は作戦を練る。
ただ東北はとても遠くて広いし名所もたくさんあるが、なによりも天気に左右される。
宿泊ホテルを押さえてからも台風の接近や天気予報に左右され数回予約を取り消す。
好天が予想される唯一の日を活かし、ダメなら温泉があるとやけっぱちで挑んだ今回の旅行。
会津地方で所を変えて5泊、アッシー君の山は安達太良・磐梯・吾妻と豊富にある。
火山フェチに目覚めた自分にこんな素晴らしい土地はない、どこも観て周りたい。
ただ好天が1日だけなので、時間や体力を考えて今日のような計画になった。
とにかく、火山といえば磐梯山、しかも表ではなく絶対に裏磐梯、と。
午前、安達太良山で急ぎの2時間歩き。
沼の平という立派な火口を山頂から少しだけ見て、後ろ髪を引かれつつ下山し、移動する。
急いでいるときには往々にしてある道路工事の一方通行、じっと我慢してとにかく裏磐梯へ。
朝方は晴れていたのに、どんどん雲が出てきて下り坂だ。
それでもあの、本体が大きく欠けた双耳峰?のような磐梯山の姿が少しだけ拝めた。
登山口から少し奥に入った裏磐梯スキー場へ、未舗装の道を車で走る。
たくさんの人が駐車し登山口とする磐梯山ゴールドラインの八方台ではだめなんです。
建物があり、いかにもスキー場らしいなだらかなスロープの端にはリフトがある。
このスロープが1888年の小磐梯の噴火、山体崩壊の岩なだれなどでできたとは!
時間がない、とりあえず急ぎ、胴沼(あかぬま)を目指し出発。
歩きやすいようで石がごろごろすべり転がるゲレンデを早足で上る。
すすきが秋の風情を出しているが、なぜかまだ暑い。
振り返ると、下っていくスキー場のはるか先に桧原湖が見える。
火口原との分岐の手前右手に胴沼へむかうショートカット道があるのでそれを利用する。
ジオパーク看板『岩なだれ』があり、火口壁の上に磐梯山が少し顔を出している。
樹林帯になりしっとりとした空気の中、道は湿っていてぬかるみがあらわれる。
それらを避けつつ、ぽっかりと明るい場所が見えてくるとそこらしい。
求めていたものが看板のすぐむこうにあるのを確かめつつ、荷をおろしてカメラを取り出す。
ずっと雨が続いているのになぜか少ない水量で、干上がっている感じでもある。
もちろん、ふだん見えないものがこうしてさらけ出されているほうがありがたみが増す。
沼のむこうに櫛ケ岳の鋭鋒とはだけた火口壁がすさまじい。
蒸気らしい噴煙がふたすじあがっている、注意だ。
温泉露天風呂がそのまま大きな沼池になったようだ。
すばらしく異様で贅沢なものを見た。
これで当初の目的は充分に達成したので引き上げてもいい、のだが。
足は先へ進んでいく、おお、まだやる気が残っていた。
ぬかるみを避け、小沢を渡り、急な階段状の道を上がっていく。
すると大きなザックを背負った高校生の一団が下りて来る。
道は狭いので寄ったり避けたり。
彼らはとても統率のとれた集団で、指導者が指示を出すとすぐに従う。
道を譲ってくれてありがたいが、小心者の自分は先を急がねばとあせってしまう。
最初はそれでよかったが、かたまりの集団はずっとつながり、途切れる事がない。
なんと総勢180人余とかで、福島県の高校山岳部のイベントだった。
初々しい顔立ちながら大きなザックを背負った猛者連中をずっと見る。
最後のほうになって小柄なJKの一団があらわれた時にはほっと救われた。
喘いで上がった先で、八方台からの登山道と合流する。
整備された道には一般登山者が増え、火口壁の側面をトラバースするように進んでいく。
左手に、数箇所視界の開けるところはあるが、上下動だけがやたらと多い。
高度も稼がないまま、ずんずん下っていくのには困った、上り返しがいやだ。
たくさんの人とすれ違い、面白味を感じないまま、お花畑分岐をやりすごす。
東北の山の紅葉が出てきたことが救い。
ようやく弘法清水へ。
冷たい水のでる清水には先客が数人、近くには山小屋が2軒。
冷水をごくごく飲み、空になっていたペットボトルに水を満たす。
足がだるいし疲れも出ていたのでこれは助かった、でもここは四合目弘法清水。
冗談はよしこさんだなあ、なぞの四合目表示。
さあ、さいごの踏ん張りどころ。
元気よく下ってくるみなさんがうらめしい。
そのみなさんの背後や横を見ると、紅葉が出ている。
あらまあなかなかのもんじゃ。
「えっ、これから上るの。あなたが最後の登山者だよ」
時間的に遅いのだから仕方ない、山頂は独り占めってことか。
あと少し。
振り返って見る裏磐梯は霞んではいるが見事な眺めだ。
ガスってきて山頂の360度の展望はどうか。
風があたり、岩がごろごろ積もっているのは、どうも山頂らしい。
ガスの切れ間、ずっと見てきた桧原湖や櫛ケ峰が見下ろせる。
反対の南側といえば、大きな猪苗代湖が見えるはずだけど。
どうも表には縁がなさそうで、わずかに湖らしいものが少し。
風当たりが強いし、ここは寒くて休憩には無理そうだ、ユン・ゲサン。
弘法清水までは一気の下り、でも上れてほっとする。
自分が最後だと思っていたら、ぽつんぽつんと若いのが上がっていった。
弘法清水ではふたたび冷水を飲み、白アンパンを食べて休憩。
さて次はもうひとつの見どころをしっかり押さえないと。
ちょうど営業小屋の方が仕事を終え下山するところに出合う。
火口原への道の状態を尋ねると、しっかり整備されていて近道でもある、とのこと。
なんとか夕暮れ前に戻れそうで、今一度装備や体調を整える。
いきなりの急坂だが、ここはまだお花畑への通り道なのでよく利用されているはず。
突き出た天狗岩が臨め、平坦なお花畑は八方台コースでは唯一の見どころではないか。
黄金清水を過ぎ、眼前に櫛ケ峰の雄姿を見ながら進む道は気分がいい。
左手が火口壁のすぐ縁なので少しの気も抜けなさそう。
その急崖を覗くと、エメラルドと白と茶色の胴沼が見えた。
この稜線歩きに表からの道が合流し、そちら方面には気になる山上池がある。
来た道を振り返れば、そのずっと上に磐梯山がすがたを変えてちょこん。
眼前には、横からの明るい太陽光がますます櫛ケ峰のマッチョな姿を目立たせる。
双耳峰の磐梯山の大磐梯はともかく、もう片耳の櫛ケ峰の存在感にはずっと心を奪われる。
鞍部が近づいてきて、あらためて櫛ケ峰を見上げる。
レポにはみなさん、結構上っておられるが、上り口の岩の×印はなんざんしょ。
さて、ここからが今日一番の急な下りの噴火口部分。
ただ、道には足場がしっかりとつくられ、途中からは鉄の支柱がずっと並ぶ。
それをつかんでいくと、まるで吊り輪をあやつるシャハリンになった気分。
あまりに急で膝はがくがく、爪先はつんのめって痛い。
裏磐梯の登山コース、往きはこちらから時計回りにというのが一般的だがそれに納得。
かつての火口原の荒地は苔むした樹林帯になり、自然の復元力に驚く。
右手に時折、太陽光に照らされた火口壁がまぶしい。
胴沼から見るよりもずっと近いので、数十万年に及ぶ火山活動の積み重ねが明確。
火山研究の教科書に、火山内部が見られる断面として貴重なんだそうな。
さらに下っていくと、岩なだれが扇状地のように広がった火口原の中心に来る。
1888年の山体崩壊以降も、火口壁はなんども崩れているそうでその爪跡。
道が分かりにくくなるので、赤マークがしっかりとつけられている。
そこから再び起伏のある明るい樹林に入る。
山体崩壊のくずれ流れた先にできた「流れ山」のつらなりがそれだそうな。
雰囲気は白砂青松、ただ根元に咲き乱れる白い玉の花「シラタマノキ」がいい。
このツツジ科の低木が、数百メートル続く道の両脇に群生する。
ぐったりと歩き疲れていたのに、なんか見どころばかりで、最後まで気がもてた。
はじめの分岐に出て、あとはスキー場ゲレンデをくだるだけ、長いけど。
なんとか日暮れ前に戻る、充実の4.5時間歩き。
山は逃げない、無理は禁物というけれど、残り時間が少ない時は跳ばないと。
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